感染性胃腸炎のお手当て

12月のある日。朝起きたら、息子が急性胃腸炎を発症し、大変な騒ぎでした。

夫が起こしに行くと、ベッドは嘔吐、下痢で汚れており、息子はぐったり。その後、さらに2回ほどお腹を下し、4回ほど吐きました。

「ついに、うちにノロウイルスが来たのか!」と、夫婦で焦る焦る。

娘を学校に送り出し、息子は隔離。

私もひどい胃もたれと頭痛で起きられず、夫に息子を病院に連れて行ってもらいました。少し寝坊させてもらうと割とスッキリしたので、私の場合は疲労がたまっていただけのようでした。

息子は、朝の大騒ぎの後、病院にいる間も、一切、嘔吐も下痢もなく、山は越えたかなと、一安心していました。

結局、2日間ほどで回復しました。

しかし、数日後、娘が嘔吐、私も嘔吐、、、

私たちは嘔吐だけですみ、1日で回復。

ここまで感染力が強いとなるとノロウイルスだったのかもしれません。

どうしてはっきりわからないかというと、、、感染性胃腸炎の原因菌は検便キットで採取して、病院に提出するのですが、これはマストではないし、必ずしも検便が採取できるとはかぎりません。検体中に、ある特定の菌やウイルスがたくさん見られれば、それが原因と分かります。

原因が細菌だったとしても、ウイルスだったとしても、感染性胃腸炎の一番の予防は、手洗い、吐瀉物などの汚れの適切な処理。

私も息子が発症した時にはとても気をつけたのですが、娘の時には嘔吐したものをとっさに手で受けたりしたり、娘が汚したものの洗濯で感染したのでしょう。

ところで、市販には手を洗わなくても除菌できるジェルが数多く売っていますが、菌やウイルスは殺せるのでしょうか?

「除菌」、「殺菌」、「抗菌」の違い

身の回りにあふれるこの言葉の定義は、全部違います。

■滅菌

 「滅」とは「全滅」の滅であり、滅菌といえば意味的には菌に対しては最も厳しい対応、ということになります。
つまり、すべての菌(微生物やウイルスなど)を、死滅させ除去することで、日本薬局方では微生物の生存する確率が 100万分の1以下になることをもって、滅菌と定義しています。
しかし、これは現実的には、人体ではあり得ない状況(たとえばヒトの手を滅菌するには、人体の細胞ごと殺さなければならないことになる)で、器具などの菌に対しての用語だと考えられています。

■殺菌

 これは、文字通り「菌を殺す」ということを指しています。細菌を死滅させる、という意味ですが、この用語には、殺す対象や殺した程度を含んではいません。
このため、その一部を殺しただけでも殺菌といえる、と解されており、厳密にはこの用語を使う場合は、有効性を保証したものではない、ともいえます。
また、この「殺菌」という表現は、薬事法の対象となる消毒薬などの「医薬品」や、薬用石けんなどの「医薬部外品」で使うことはできますが、洗剤や漂白剤などの「雑貨品」については、使用できないことになっています。

■消毒

 物体や生体に、付着または含まれている病原性微生物を、死滅または除去させ、害のない程度まで減らしたり、あるいは感染力を失わせるなどして、毒性を無力化させること、をいいます。
消毒も殺菌も、薬事法の用語です。一般に「消毒殺菌」という慣用語が使われることもあり、消毒の手段として殺菌が行なわれることもあります。ただし、病原性をなくする方法としては殺菌以外にもあるので、滅菌とも殺菌とも違うという意味で、使い分けがされています。

■除菌

 物体や液体といった対象物や、限られた空間に含まれる微生物の数を減らし、清浄度を高めることをいう、とされています。これは、学術的な専門用語としてはあまり使われていない言葉ですが、法律上では食品衛生法の省令で「ろ過等により、原水等に由来して当該食品中に存在し、かつ、発育し得る微生物を除去することをいう」と規定されています。
いろいろな商品で、この性能を訴求する商品もたくさん出てきており、除菌の方法も洗浄やろ過など、各分野でさまざまな意味づけが行なわれたり、それぞれ程度の範囲を示している、と考えられます。
たとえば、洗剤・石けん公正取引協議会が定義する除菌とは、「物理的、化学的または生物学的作用などにより、対象物から増殖可能な細菌の数(生菌数)を、有効数減少させること」で、この細菌にはカビや酵母などの真菌類は含まれません。

■抗菌

 これも、近頃では幅広い商品に謳われるようになりましたが、「抗菌」とは「菌の繁殖を防止する」という意味です。経済産業省の定義では、抗菌の対象を細菌のみとしています。JIS 規格でその試験法を規定していますが、抗菌仕様製品では、カビ、黒ずみ、ヌメリは効果の対象外とされています。
菌を殺したり減少させるのではなく、繁殖を阻止するわけですが、これも対象やその程度を含まない概念です。

■減菌

 微生物を特に限定せずその量を減少させる、という意味で、「消毒」と同じように器具・用具などについて使われることがあります。

日本石鹸洗剤工業ウェブサイトより引用)

手洗いと消毒

オムツ替えの後で手を洗わず、ジェルを塗るママさんを見かけますが、清潔ではないですよ、、、遊具で遊んだ後、ジェルを塗って、パンをかじる。菌だらけです、、、

市販の除菌ジェルは、基本は菌やウイルスを「減らす」ものなので、必ず流水でしっかり手を洗ってからジェルを塗るか、どうしても手を洗えない時の補助にするべきだと思います。アナログのようだけれど、しっかりと泡だてた石鹸で洗い、流水でしっかりと流す。これがポイントです。

正しい手の洗い方は、こちらを参考にして下さい。

政府広報オンラインより引用)

家庭にある消毒剤としては、消毒用エタノールが手軽かと思いますが、細菌には効いても、実は、ウイルス性胃腸炎の原因として知られるノロウイルスには効きません。ノロウイルスには、エタノールではなく、次亜塩素酸ナトリウムが有効。これは、花王のハイタ―やキッチンハイターの主成分です。ノロウイルスの消毒には200ppmの濃度が必要で、これは、キッチンハイタ―5ml(キャップ2杯)を水5Lで薄めた濃度です。
花王のウェブサイトを参照)

洗濯や調理器具は、水で洗い流して汚れをほぼ取ってから、この濃度の消毒液につけます

ただ、次亜塩素酸ナトリウムは漂白作用があるので、実は使いにくい。大事な家具や床、壁など、気をつけて使わないといけないんですよね、、、

体についた汚れは、ぬるま湯と石けんで洗い流します

感染予防、かかった後の対応については、国立感染症研究所感染症情報センターのウェブサイトに一般の方向けの注意事項が書いてありますので、ぜひ読んでみてください。

感染性胃腸炎の薬物治療

でも、どんなに気をつけても、感染性胃腸炎にかかってしまうことがありますよね。

細菌性胃腸炎にしても、ウイルス性胃腸炎にしても、嘔吐、下痢は止める必要はありません。ウイルスや、毒素が原因であれば、異物を体外に出す体の防御反応だから。

処方される薬も、ほんとは何もいらないと思います。必要だとしても、ビオフェルミンやビオスリー、ラックビーなどの整腸薬、ナウゼリンなどの吐き気止め。私なら飲むとしても、整腸薬のみです。

よく、「食べると吐いてしまう」から吐き気止めがほしいとおっしゃる方がいますが、感染性胃腸炎で吐き気がある場合には、吐き気が治るまではまとまった量を食べることは控えて、小分けに少量ずつ食べるほうがいいでしょう。

吐き気があるのは、体に異物がまだあるという反応。回復力があれば、感染性胃腸炎の吐き気は2,3日で回復してきます。

息子の場合ですが、保育園児なので、念のため、病院に行きました。

息子がかかった病院の先生が処方したのは、ナウゼリン坐剤、ビオスリー配合散。

ナウゼリン坐剤は、吐き気止め。食べないでいても、吐き気が強く、嘔吐が続く場合には使ったかもしれませんが、今回は一切使いませんでした。

ビオスリー配合散は、乳酸菌製剤。下痢では、大腸の善玉菌と悪玉菌のバランス(腸内フローラ)が崩れるから、善玉菌を補うのは有効です。こちらは2日間服用させました。

感染性胃腸炎という説明に対して、抗生物質、止瀉薬(下痢止め)が処方されていたら、ちょっと違和感を感じたかも。

「感染症なのだから抗生物質も有効なのでは?」という方もいますが、抗生物質は腸内フローラを激しく崩し、下痢の副作用をよく起こす薬剤です。さらに、ウイルス性胃腸炎の場合には、抗生物質は効きません。

市販の薬で様子を見るなら、ビオフェルミンなどの整腸薬を買います。

食あたりの場合も同じことで、ドラッグストアで働いていた頃、「海外に行くので、正露丸がほしい」という方には、ビオフェルミンを勧めていました。

ウイルスや細菌が原因の胃腸炎、食あたりの下痢は、異物を排除するため!

下痢は止めない!

どうしても飲みたいなら整腸薬。

経口補水液の必要性

吐き気がある間、食事がとれない場合には、水分や電解質を補給しないと、脱水を招きます。嘔吐や下痢がある場合には、ナトリウム、カリウムといった、体内の重要な電解質が失われるため、必ず、電解質を含む水分補給が必要になります。時に、重篤な症状を招くので、注意が必要です。

電解質を含む飲み物は、市販のものでいえば、「OS-1」、「ポカリスエット」などが、電解質や糖分を補う経口補水液といわれるドリンクです。

似たものに、「アクエリアス」などのアミノ酸飲料がありますが、これはスポーツ前後のアミノ酸の補給に使うドリンクで、ナトリウムが少なく、電解質の補充に向かないので、嘔吐や下痢の際には向きません。

この経口補水液、いざという時に常備しておくのもいいですが、自分でも作れます。

経口補水液の作り方

砂糖 15g(大さじ1杯)
食塩 2g(小さじ1/2杯)

を良く混ぜて溶かすだけ。飲みにくければ、レモン汁を加えます。

嘔吐や下痢がある時は、経口補水液を一口ずつ、こまめに飲むようにします。こまめに、がとても大事。吐き気がひどい場合は、5分に一口で十分。一気に飲めば、吐き気を催します。

糖とミネラルという意味では、りんごジュース(柑橘は不向き)と味噌汁の上澄みを飲むのも手軽です。

感染性胃腸炎の自宅でのお手当て

感染性胃腸炎で、重度で入院治療が必要でない場合には、基本的には、

1.水分補給
2.絶食
3.休養

の3つが基本だと、私は考えます。

私に症状が出ている間、ほんとは異物の排泄を助けるような精油のブレンドなど、試したい気持ちもありましたが、体が動きませんでした。とにかく体を休めたいとしか思いませんでした。

自分が倒れると、アロマだのハーブなど言ってられなかったのですが、とても役立ったのは、ペパーミント。先に症状が出た息子と娘が寝ている時に、ペパーミントをディフューザーで焚いたら、楽になったと言っていたので、夫に焚いてもらいましたが、抜群に楽になりました。

香らせるだけなのに!

ペパーミントに少しレモンをブレンドして、さらにさわやかに。

ペパーミントはモノテルペンアルコール類のl-メントールを含むので抗菌、抗ウイルス作用があるし、レモンの抗菌作用も空気の清浄に良いブレンドですね。

病気になっても、慌てないよう、普段から健康維持に役立つ情報を頭の片隅に止めて置いて下さい。

病気の時にも、香りは気持ちを穏やかにしてくれます。

一緒に、もっと楽しく、使えるアロマテラピーの知識を手に入れましょう。

(追記)2020.02.29

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